IT屋の会社設立 – Stripe Atlas

 今回はITを仕事にするIT屋が低コストで世界を舞台にできる会社を設立するにはどうしたらよいかと言う話です。


Departure

 「会社を設立する」というのは「会社を登記する」ということですが、もっぱらネット上を活動の舞台にするIT企業の場合はどこの国で登記するかはあまり影響がない。また、日本で登記する場合、「株式会社」等の法人格を複数の中から選択できるわけだが、昨今では「株式会社でないと信用が低い」などということも無くなった。今回は香港に登記してある弊社の事例をベースに、現時点でオススメの方法をお話ししたい。

1. 気にすべきこと

 登記する国によって異なることのうち、気にしたいことは下記です。

  • 登記時の費用
  • 定款の制限
  • 法人名義の銀行口座の開設難易度
  • 登記の維持に必要な費用
  • 決算公告の必要性
  • 登記の抹消にかかる費用と期間
  • 法人税率

2. 日本の場合

 日本で登記するなら「合同会社」が断然オススメです。株式会社の登記には25万円ほどがかかります。しかし合同会社なら最安で4万円(電子登記の場合)で登記ができます。ちなみにアマゾンの日本法人は株式会社ではなく合同会社として登記しています。

 株式会社と比較して合同会社の最大のメリットは「意思決定のコンパクトさ」にあります。株式会社では会社の最終意思決定機関は株主総会なので、意思決定する際には株主にお伺いを立てる必要があります。しかし合同会社では会社の所有者(法的には「社員」といいます)は会社の運営者なので、合同社員の所有者が集まって「こうしよう!」と決定したら完了です。

3. 香港の場合

 香港に登記する場合、現地の手続き代行業者にお願いすることで登記書類の提出までに40万から50万円ほどがかかります。また、日本での法人登記の際には定款を提出しますが、香港でもこれはあります。定款について日本との大きな違いは、業務とする領域に特段の制限を設けなくても良いことです。つまり、日本の定款では「インターネットでのセキュリティー業務およびこれに関わる一切の業務」と宣言した場合、不動産業はできません。しかし香港の場合はこのような制約は設けられず、同じ会社の登記で全然違う業種に「商売替え」することができます。

 法人名義の口座開設ですが、これには実際に香港にある銀行に行って担当者と個別に会って会社の事業計画を説明し、開設の承認を受ける必要があります。香港は公用語が「英語と中国語(広東語か普通語かは規程しない)」なので、これらのどちらかでお話しする必要があります。私は幸いにも英語が話せるのであっという間に承認してもらえて、その場でワンタイムパスワード発生器をもらえましたが、英語が話せない人には高いハードルのようです。この英語のハードルは香港と並んで人気があるシンガポールでの法人設立においても同様です。

 登記の維持ですが、香港法人にも決算の必要がありますが決算公告は必要ありません。なお、登記と管理を現地の手続き代行業者にお願いした場合は毎年15万円ほど(相場)の更新費用を支払う必要があります。また、法人口座の維持には、預金残高によって毎月3000円ほどの「口座維持費用」を請求されます。

 法人口座のお金の扱いですが、銀行によってはセブンイレブンにあるATMで引き出しはできるものの入金ができないことがあります(例:HSBC)。これが意外と厄介で、数年前まではそれほどきつい制限もなく海外口座への送金(Wire Transfer)できたのですが、2018年あたりから銀行の対応が非常に厳しくなりました。金融庁からの指示が厳しくなったそうで、その根拠には
下記のような法規制があります。

  • 犯罪収益移転防止法
  • テロ資金供与防止法
  • 米国の制裁対象になっている国への資金流出を防ぐ法

 このことから、日本から海外の口座に送金する行為は非常に困難になっています。しかしながら、逆に言えば、俗にいう「(アメリカ視点でのホワイト国)であれば上記制限は緩和される」ということなので、アメリカ国内に口座を持つことが解決策になると思います。これが、下記でアメリカに法人登記することをオススメする理由です。

 なかなか言及されないことですが、香港に登記した法人の登記抹消をするには1年ほどの時間と50万円ほどの費用がかかります。日本だと数万円であっという間にできるのですが、香港では非常に労力のかかる手続きです。香港にて法人登記しようと思う方はこの点をお忘れなきよう。

 なお、香港の法人税率は「16.5%」とほぼ日本の法人税率(30%)のほぼ半分です。香港と並んで検討されるシンガポールは17%(2017年から様々な税制優遇処置が施行され、実効税率は一桁になる場合もあります)です。

 ところで、弊社がなぜ香港で登記したのかというと、以下の理由があります。

  • 距離的に近いこと(日本から4時間)
  • 時差が日本と小さいこと(1時間)
  • 英語が公用語であること
  • 世界中の通貨(特にCNY)が容易に扱えること
  • 法人税率が日本の半分ほどであること
  • 個人的に「九龍(クーロン)」周辺が好きなこと

4. 2020年に登記するなら(アメリカ デラウェア州)

 2020年に登記するならアメリカのデラウェア州をオススメします。多くの法人がこの州で登記しており、その理由は「登記手続きのシンプルさ」「維持費用の低さ」「法人税率の低さ」「アメリカの銀行に法人口座を開ける」です。

 アメリカ西海岸に本社を置くストライプというオンライン決済サービスの会社が「Stripe Atlas(ストライプ・アトラス)」という、このデラウェア州での法人登記を代行して登記の維持や銀行口座開設までを行ってくれるサービスを2016年末にはじめました。

 登記完了までに5万円ほど、毎年の維持費に5万円ほどでアメリカ企業を登記できるとのことです。


 会社を持つと義務や費用も増えますが、社会に対して責任を持って堂々と貢献することができます。税負担の軽減について言及されることもありますが、パナマやバージン諸島のようなあからさまな租税回避地でなければ社会への信頼を保って活動できます。よく精査して選びましょう。

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