今回はペイパルをウェブショップで決済に使う際に気をつけなくてはいけない国ごと通貨ごとの制限があるよという話です。
近年は様々なネット決済サービスが雨後の筍のようにできていますが、決済とは支払手と受取手が同じ決済サービスにアカウント(口座)を持っていることが大前提であることを考えると、利用者数が2億5000万人いるPayPal(ペイパル)がいまだデファクトスタンダードなのではないでしょうか?特に国際的な決済に関してはPayPalに一日の長があるように思います。
ペイパルのアカウントは必ずどこかの国と紐つけられており、いわばアカウントが国籍を持つことになります。この国籍がどこの国かによってアカウントに付与される「できること・できないこと」が決まります。また、扱う通貨によっても「できること・できないこと」が決まります。ペイパル決済をウェブサイトに導入して日本国外からのネット決済を期待する場合、あまり知られていませんがこのような「アカウントの国籍と通貨ごとの制限」に気を付ける必要があります。
1. アカウントを作成できる国とできない国がある
現時点でペイパルのアカウントを作成できる国は 203ヵ国 と公表されています。しかし、アカウントを作成できない国もあり、この理由は公表されていませんが、それらのアカウントを作成できない国はどうやら「アメリカ合衆国と政治的に円滑な協調関係が築けていない国」出会ったり「政治体制が不安定な国」ということのようです。例えばアジアでは「ミャンマー」「バングラディッシュ」が、中東では「シリア」「トルコ」「イラク」「イラン」「パキスタン」のような国々がアカウントを作成できない国です。
2. アカウントを作成できるが支払いしかできない国がある
上記の通りペイパルのアカウントを作成できたとしても、アカウントの国籍によって「支払いも受取りもできるアカウント」と「支払いしかできないアカウント」があります。幸い日本に紐ついたペイパルのアカウントは「支払いも受取りもできるアカウント」です。もし、「支払いしかできないアカウント」から支払いを受けた場合、「リファンド(返金)」処理であればお金を送り返すことができますが、リファンドではない経緯でお金を送らなくてはいけない場合は送ることができません。
3. 支払手と受取手が同一の国籍の場合のみ使える通貨がある
ペイパルでは様々な通貨を使って支払いと受取りができると謳っていますが、実は制約があります。例えば「MYR(マレーシア・リンギット)」や「RUB(ロシアン・ルーブル)」といったいくつかの通貨には支払いと受取りができるアカウントがそれぞれの通貨発行国の国籍である必要があります。
例えば、日本国籍のペイパルアカウントを持つオンラインショップが、ロシア国内の人々をターゲットにして製品をネット販売したい場合、買い手の経済環境に合わせて販売金額を「ロシアン・ルーブル」で付けた場合、日本国籍のペイパルアカウントを持つオンラインショップでは支払いを受け取れません(支払い処理の途中でエラーになる)。
4. 手数料には「決済手数料」だけでなく「為替手数料」がある
ペイパル決済で代金が支払われた場合、その際に決済手数料として決済額の「3.6% + 40円 / 件(標準レート)」を受取手が負担します。しかしながら、このほかに為替手数料という隠れた手数料がかかる場合があります。
各ペイパル口座には複数の通貨で子口座を持つことができます。もし支払手のペイパルアカウントに日本円の口座しかなく、ネットショップの商品がアメリカドルで付けられている場合、支払い行為によって「支払手に」為替手数料が課されます。また、ネットショップの商品がアメリカドルで付けられているにもかかわらず、受取手のペイパル口座に日本円の口座しかない場合、支払われたアメリカドルを日本円の口座に格納するために「受取手に」為替手数料が課されます。ですので、特に受取手としてペイパルを使用する際は、受け取る通貨で子口座を予め作成することが手数料の負担軽減になります。
我々はユーザーとして単一の国籍のペイパルアカウントのみを持つことがほとんどのケースであり、俯瞰的に多国籍の視点で見た場合にしか気がつかないトラップがあります。現時点でもデファクトスタンダードと言えるペイパルですが、これらのトラップをクリアして確実に使えるインテグレーションを行いたい場合には弊社のようなグローバル視点でのノウハウがあるプロ中のプロにご相談ください。